渡米前:子供の教育事情

子供の教育事情

「これで安心 子どもの教育ナビ」著者 高橋純子様監修

 

アメリカの教育事情

アメリカの公立学校は連邦政府ではなくそれぞれの州の統括となり、また市や町などの地方政府が実際の運営をしています。このため、文部科学省が告示する学習指導要領に沿って教育が行われる日本に比べると、アメリカは学校によって方針や授業内容などに個性・多様性が見られます。こういった意味では全体の平均的教育レベルに一貫性がない半面、子どもの個性や想像力、独自の思考力・表現力を重視していると言えるでしょう。

またこれらの学校の運営は、主に州からの補助金と地域住民の不動産税金から賄われているので、その地域独自のポリシーや、貧富の差から教育レベルにも格差が生じています。つまり、裕福な家庭が多く住む地域は学校の教育環境やレベルも良いが、都市部などの貧しい家庭や移民などが多い地域は必然的にレベルも低下し、特に高校になると、学校の治安そのものにも問題があるのが現状とされています。

アメリカの学校の種類

アメリカの学校は、公立校と私立校に分かれています。

公立の特徴

*基本的にその地域に住んで税金を払っていれば、居住校区の学校に入学でき、授業料も無料(若干の諸経費、昼食費、遠足費、特殊教材費等)だけがかかり、教科書なども貸し出しが原則。

*地域の貧富の差などによって学校の環境やレベルも格差があるので、住居を決定する際からの校区の学校を考慮に入れておくことが重要。

私立の特徴

*入学にはERBやISEEといった一般基準能力テスト、面接、それまでの成績などで審査されるのが一般的。

*教育レベルや環境は保証されるが、授業料やその他諸費用などがかかり、日本の大学並みの出費になることもしばしばある。

*人気のある学校は満員でウエイティングリストに載せられる可能性もあるので、志望校をひとつにしぼらないほうがよい。

*インターナショナルスクールや日本人学校なども私立校に含まれる。日本人学校はアメリカでも限られた地域にしか存在しないが、基本的には私立学校とみなされ授業料がかかる。滞在期間が短い子どもや、母国語形成時期、日本での受験前など重要な学習時期の子どもたちには、そのまま日本語で教育を続けさせるのが理想的。

アメリカの公立校の転入手順

必要書類

日本で用意しておく書類

1. 成績証明書:日本の学校で英文で作成してもらう(高校生と中学3年生は現地での単位取得などに関係してくるので特に必要)
2. 在学証明書:日本の学校で英文で作成してもらう。
3. 予防接種証明:母子手帳を翻訳しておく。現地での健康診断の際に持参。

現地で用意できる書類

1. 出生証明書(パスポートのコピーで可能)
2. 住居の賃貸証明(Lease/Rent Agreement)、又は購入証明
3. 健康診断書(Medical Form:現地校からもらったフォームに医師が診断して書き込む)

手続きの手順

1. 住居が決まってから学校へ連絡を取り入学したい旨を伝える。学校区がはっきりしない場合は教育委員会へ連絡を取りどの学校区になるかを確認する。地区によっては最初に教育委員会に出向き、その地区の住人であることを証明させられる場合もある。
2. 学校へ出向いて必要書類を渡し(保護者または代理人でも可)入学手続き書類一式を受け取り記入する。この時、住居の賃貸購入証明書、出生証明書が必要。
3. 医師のもとで健康診断を行い、足りない予防接種をする。(学校指定のフォームを使用)。
4. 入学手続き書類一式を提出する。学年の問題等で、校長や担任の先生、ESL先生との面接が必要か否かを確認する。学校によって多少手順が違うので注意。
5. 学校側の書類確認が済めばいつでも登校可

アメリカの現地校の主な行事

現地校には日本の学校にない行事もある。次のリストを参考にしよう。

Orientation

新学期前に、保護者を対象に学校が行う説明会。新しい先生や規則などの説明、新学期に必要なものやその他の連絡事項が渡される。ミドルやハイスクールの場合、各教科の先生が学校の目標などを説明することもある。

Field Trip

日帰りの遠足である。市役所見学や植物や動物の観察など、社会や理科の研究目的で行く郊外学習もある。アメリカでは責任問題や訴訟が多いせいか、日本のような泊りがけの修学旅行はあまり見られない。中高生になると参加希望者のみの宿泊旅行があることも。

Show and Tell

行事というより小学校のカリキュラムの一環。生徒が自分の宝物や自慢できるものを学校に持参し、それについての発表を行う。みんなの前で発表できる力、表現力を養うために行われている。中には知り合いの有名人などを連れてくる子どももりう。親が参観に来る場合もある。

Halloween

日本でもおなじみのハロウィン。アメリカでは学校でもパーティーがあり、子どもたちはさまざまなコスチュームで参加する。

Bake Sale

ファンドレイジング(資金集め)の一環として、保護者がクッキーなどを焼いて売るもの。この時にPTAやボランティアの協力がものをいう。

Birthday

小学校レベルでは子どもの誕生日をクラスで祝う。この時、誕生日の子どもの親が、人数分のカップケーキを焼いてクラスに届けるのが通常となっている。

Field Day

運動会のようなもので、陸上の競争やチームに分かれての競技などを行う。日本のような予行演習や行進はない。

Open House

日本の授業参観に匹敵するもの。基本的には学校を開放して、親に子どもたちの授業中の様子などを自由に見学してもらうもの。学校によっては、週末に親が生徒となり子どもたちと同じ授業を受けてもらい、子どもの立場から授業内容を理解してもらおうというユニークな企画をしているところもある。

Prom

アメリカらしく、紳士・淑女を装うようなフォーマル形式のダンスパーティー。高校がかいじょうを借りて行う。ジュニア・プラム(11年生)とシニア・プラム(12年生)がある。生徒の間では誰を誘うか、どんなドレスを着るかなど、一生の思い出になるほどの一大行事。パーティーではプラム・キングとクイーンが選ばれる。

Home Coming

高校でフットボールの大きな試合が始まる前に行われるお祭りイベント。ここでもホームカミング・クイーンが選出され、パレードなどが行われる。

アメリカの現地校での成績表

成績表は英語で「レポート・カード」(Report Card)と呼ばれます。現地校の成績表は学校にもよりますが、多くの場合学期毎に中間と終了後の2度送られてくるようです。

小学校の場合はA、B、Cを使うより、E(Excellent)、G(Good)、S(Satisfactory)、I(Improving)、U(Unsatisfactory)またはN(Needs Work)という付け方が多いようです。

項目としては、人間としての責任感や社交性などを測る”Personal and social development“、学習に対する意欲や整理能力に関する”Work habitats“、そして学習自体の伸びを評価する”Academic performance“などがあります。クラスでの発言や積極性を問う”Class participation“という項目がある学校もあり、これはおとなしい日本人の子どもが苦手な項目とされています。

 

アメリカ現地校転入前の英語学習

現地校転入までの日本での英語学習ですが、みなさんよく慌てて子どもに英会話を習わせてから渡米されるケースが多いようです。しかしこのような英語学習は、多くの場合が実際現地校に入ってみるとあまり役に立たず、まわりが何を言っているのかさっぱりわからないというのが現状です。これはまったく当然のこととして覚悟しておきましょう。一般的なあいさつなどを覚えておくのはもちろんですが、理想的にはもっと学校で使う表現や授業で使う単語など、実践的な内容を学習しておいたほうが子どもたちが助かるようです。例えば、先生の指示語、学習用語、科目や学校内の場所の名前、そして困ったときに先生や友達に助けてもらえるサバイバル的な表現などを覚えておくと役に立つでしょう。

また実際の英語学習としてまず始めることは、アルファベットを完璧に書けるようにし、フォニックス(Phonics)をしっかり学んでおくことです。(フォニックスの説明は後述)

フォニックスとは綴りと発音の関係を段階的に学ぶプログラムで、アメリカの学校では非常に重要視されています。これを覚えることによっていろいろな単語や本が音読できるようになるので、アメリカ人の子どもたちは幼稚園や小一くらいの段階からこれをみっちりたたきこまれていきます。ですから日本にいる間にアメリカで使用されているような教材を入手し、これをアメリカ人またはバイリンガルの先生に学んでおけば、転校時にはある程度スムーズに英語学習に入れるかもしれません。

●現地では予想以上に英会話に対するコンプレックスが強く、親はどうしても子どもに「会話を覚えさせたい」という希望ばかりが強い傾向があります。会話に関しては、いずれにしても最初はさっぱりわからないことが圧倒的に多いですが、友達と遊び出すと ようやくかたことを話し始め、二年ほどで文法的な間違いはあってもある程度流暢に話せるようになる、というパターンが多いようです。

しかし実際現地校に入ってみると、読み書きが予想以上に要求され慌ててしまう家庭も少なくありません。現地校はあくまでも教科を学習するところであると認識し、学校側も容赦なくそのような態度で臨んでくるということを覚悟しなければなりません。例えば毎日の宿題も、▼プリントや本を読んで意味を理解する▼まとめや感想などを考えて文章に書く▼毎週小テストがあるので単語の綴りを覚える▼算数も数字の計算だけではなく文章題を読んで問題を解くーなど読んで書けばければこなせない内容が山ほど出されます。そこで初めて読み書きの重要性を思い知らされるのです。また読み書きは会話と違い、自然に覚えるものではないので努力をして学習していかないと向上しません。このことを念頭に置き、日本にいるうちに是非フォニックスを中心とした基本的な読み書きを勉強して準備されたほうが懸命でしょう。理想のレベルとしては、アメリカの小一程度の本を読め、いくつかの簡単な動詞の現在形と過去形を覚えて毎日やったことなどを日記に書けるくらいを目標にしてください。 またこのような異言語環境に突入する以上、学習面、精神面共に子どもの負担は重くなります。当然家庭でのサポートはかなり重要になりますので、お母さんも学校と連絡が取れる、宿題の内容がわかるくらいの英語力をみにつけておきたいものです。

フォニックス Phonics

フォニックスとは文字群と発音との変換ルールをまとめたもの。英語圏の子どもはこのルールを最初に学びます。初めて見る単語でも発音できるようにするためです。例えば、millとmileのiは母音です。このiにはイとアイという2つの発音の仕方がります。Millはミルと発音。Mile はマイルと発音。これはイかアイを区別するルールに基づいています。ルール1、iは真ん中ではイと発音する。ルール2、eで終わる場合、iはアイと発音してeは発音しない。ただし、すべての単語をカバーするように完全なルールはなく、全体の20%以上の単語のは従来のやりかたで覚えないといけません。

 

ナーサリースクール(保育園)の選び方

ナーサリースクール(保育園)の選び方

ナーサリースクールにはいくつかの種類があり、またそれぞれが独自の特徴を備えているので、まずこれらを理解することから始めましょう。 例えば通常の保育園以外でも、子どもそれぞれの能力や個性に合わせてカリキュラムが組まれるモンテッソーリ・スクール(Montessori School)、大学の研究機関などがリサーチを兼ねて優秀な子を集めてつくっているラボ・スクール(Lab School)、デイケア(Day Care Center)などがあります。デイケアは、一般的に「託児所」となりますが、最近は教育的な内容を掲げているようなところもあります。日本人の子どもの場合、まず母国語を確立することが重要という認識から日系の保育園という選択もあります。年齢によっては午前中だけ、週三日だけというように、時間や曜日制のプログラムが選べるところも多いようです。 これらの保育園には公立・私立とあり、私立の場合は幼稚園・小・中学校とエスカレーター式の有名学校なども含まれます。 アメリカの私立有名校は、保育園でも授業料が大学並みに高いところも多いので予算上の計画が必要となります。

子どもに適した種類の保育園を明確にしたら、次のステップは実際の学校探しとなります。ここでのポイントは「自宅からかなり近い範囲にとどめる」ということです。保育園の場合、子どもの年齢が低いこともあり、病気などの緊急の時にすぐに迎えにいける距離でなければなりません。例えば来るまで何分以内などと決めて、その範囲内にある保育園をインターネットで検索をし、候補リストを出してみましょう。人気がある学校はウエイティングリストに載せられる可能性があるので、まずは空きがあるかを電話で確認します。

目指す学校の見学は必ず行う

これらの学校に見学やオープンスクール訪問を申し込んだ後、どのようなポイントで選ぶかというチェックリストを作ります。 例えば保育園の広さ、安全度(目の前を車が走っていないかなど)、清潔度、先生やクラスの印象、園児の様子、しつけの度合い(自由奔放すぎないか)など、両親で相談し、抑えたい点を明確にしましょう。 表向きに掲げている理念はすばらしいけれど、実際見学してみるとかなり違った、という例もあります。イメージに流されず、自分の目で確認することが最重要です。また英語がわからない子どもの場合、その受け入れ体制に関しても質問することを忘れずに。この後、最終的に選んだ数校に入学申し込みを行い、結果を待ちます。面接の際は、必ず両親そろって出向き、熱心さを伝えることが大きなプラスとなるようです。

現地校転入の心得

現地校転入にあたっての心得ですが、次の項目を参考に、ご家庭で方向性やモットーを決めておかれるとよいでしょう。


1 学習の優先順位を決め、明確にしておく。
日本人家庭は英語習得、現地校の学習、日本語、日本の科目学習など、あれもこれも完璧にと考えすぎる傾向にある。子供の能力、キャパシティ、時間にも限度がある。どれもやりすぎて、かえってすべて中途半端になったら例もある。日本語を学習・維持することは大切であるが、どの程度でおさえるかあらかじめ決めておく。

2 親が見本となる。
親が積極的に英語を学び、友達をつくり、現地に溶け込む努力を見せている家庭は、子どもも自然にそのような環境にある。日本人とばかり付き合っている親が、子どもには「アメリカ人と遊びなさい」というのはまったく説得力がない。

3 他の子と比べない
英語習得の早さや成績など、子どもによって能力や性格の違い、向き・不向きが必ずあるはず。「あの子は二年以内にESLを抜けたのにうちの子は・・・」と比較すべきではない。

4 言語習得を焦らない
言語習得はかなりの時間がかかるもので、忍耐強く待つことが大事。「子どもは言語習得が速い」というのは間違った認識。実際日常の会話でほとんど困らなくなるまでに約三年はかかると言われている。

5 宿題をこなすことより、学習内容を理解させることに重点をおく
日本人はこれらの重点が逆になりがち。多くの現地校は、英語ができない子から完璧な宿題を期待していない。親がヘルプして努力を見せるのは良いことだが、あくまでも子どもが中心でなければ意味がない。本来親が作文を書いたり、答えを見つけたりすべきではない。そのかわり、先生と相談して本人のレベルにあったものを工夫して出してもらうようにする。現地校の担任、ESLの先生、家庭の三者で協力して進めていくとよい。

6 子どもの精神状態を常に注意して見る
わらかない言語環境にいきなり放り込まれるのだから、さまざまな苦痛、不適応の可能性は予期しておく。またそうなった時の対処の方法をあらかじめ考えておく。最終的には、子どもの心身の健康のほうが、英語習得よりはるかに重要であることを忘れずにいたい。

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